02


一瞬にしてざわめきは収まり、静けさを取り戻す。

「騒ぐんじゃねぇ。誰がいっぺんに叩くって言った?」

次いで静まり返った室内に政宗の低音が落ちる。

なるほど。そう言うことか。

遊士は手にした碁石をジャラリと手の中で弄び、口を開いた。

「まずは上杉から、か?」

チラリと政宗に視線を投げれば政宗は頷いた。

「That's right!まずは川中島で睨み合ってる上杉の背後をつく」(その通り)

小十郎は知っていたのか何も言わず、彰吾はそれだけで理解したのかなるほど、と呟いた。

「上杉を叩いた後、川中島へ乗り込んで武田を討つ」

ニヤリと宣言した政宗に家臣達はおぉ!と声を上げる。

「それならば…」

と、皆頷き合い同意の声が次々上がった。

「分かったら各自戦支度をし、陣触れを待て」

そして、騒ぐ家臣達に指示を出し政宗は軍議は以上だと言って席を立つ。

「遊士、お前等二人に渡す物がある。ついて来い」

そう声をかけられ遊士達も部屋を後にした。

「なぁ、彰吾。この時代、上杉といえば軍神だぜ。それに甲斐の虎。両方見られるなんて楽しみだな」

「そう思うのは遊士様だけですよ。それに、武田といえば真田が…」

眉間に皺を寄せて呟いた彰吾に遊士はすっかり忘れていたのかあっ!と声を上げた。

「どうした遊士?」

その声に前を歩いていた政宗と小十郎が振り返る。

「そうだ。真田だ」

遊士の口から出てきた好敵手の名前に政宗の瞳が一瞬ギラリと光る。

「アイツがどうした?」

「武田を討つなら当然真田も出てくるよな?」

確か政宗の好敵手は真田幸村だったはず。

もしかして長年続く伊達と真田の因縁の対決が生で見られる?

「当然出てくるだろうな。アイツは俺が倒す。遊士、手ぇだすなよ?」

「出さねぇよ。そんな野暮な真似はしない。それにオレのrivalは別にいるし」

一騎討ちに邪魔が入る煩わしさはオレもよく分かっているつもりだ。

「別とは、遊士様の好敵手もやはり真田なので?」

「あぁ、真田 幸村の子孫で幸弘って言う奴だ。この間負かしてやったけどな」

小十郎の疑問に遊士は頷き返す。

不服な勝利だったけど。勝ちは勝ちだし、あのままいってもどちらにしろオレが勝っていた。

「ha、そりゃいい。なら次は俺が真田幸村を倒して、お前に見せてやるぜ」

遊士が真田を負かしたと聞き、政宗の闘志にも火が着く。

「おぅ、その時はじっくり観戦させてもらうな」

ニッ、と弧を描き、遊士は笑った。

それから、客間の一室に連れていかれた遊士は政宗から武具と蒼で染め抜かれた陣羽織を渡された。

「政宗これ…」

「お前のだ。戦に出るには必要だろ?」

羽織って見ろ、と言った政宗の前で遊士は渡された陣羽織を広げた。

彰吾も同じ様に小十郎から武具と茶色のコートの用な陣羽織を渡される。

「俺の物まで用意してくれたんですか?」

「気にするな。一人も二人もたいして変わらん」

「ありがとうございます」

寸法の確認の為に羽織った陣羽織は遊士達の為に作られたとだけあってぴったりだった。

「どうだ?」

「意外と軽いですね」

二人を並べて見ると、似せて作らせた陣羽織のせいか政宗達に似ていた。

「お二人とも良く似合っております」

「Good!良い感じだぜ」

実は始め、小十郎には似せて作らせる積もりは更々なかった。

似せれば似てるだけ敵が襲いかかってくるのだから。

しかし、政宗はあの二人はそんなに柔じゃねぇ。俺達の子孫だぜ?と、不敵な笑みを閃かせ、わざと似せるよう言って作らせたのだ。

困った主君だ、と思えど貰った二人が喜んでいるならば良しとしようと、互いの姿に感想を言い合っている二人を見て小十郎は苦笑した。



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